テレコンで学んだこと
昔、蒸気機関車がまだ現役だった頃、中学生だった自分はケンコーのテレプラスという、今で言うテレコンバーターを携えて北海道に行ったことがある。交換レンズと比べると圧倒的に安価で、焦点距離を3倍(2倍と3倍の2種類があった)にすることに惹かれ、なけなしの小遣いをはたいた。写真のことなどほとんど分からなかった時分。これを標準レンズに付ければ150ミリになると、うかれて津軽海峡を渡ったのんきな時代が忘れられない。
しかし結果は惨憺たるもの。画質はひどいものだし、ほとんどの写真にピントも合っていない。幸いだったのは当時、走行写真よりも機関区での撮影に重きを置いていたから被害は少なかったが無駄な出費に、2度とこういう怪しいアイテムなど使うものかと失敗を胸に刻んだ。
しかし技術の進歩は著しく、今やこのテレコンバーターなくしては自分の趣味活動はあり得ない。1・4倍は常用、1・7倍も適宜使用している。長いレンズを何本も持参できない公共交通機関での撮影行などはもちろん、今や車を使うときでも無駄な荷物は省いて500ミリとテレコンの組み合わせがほとんと。800ミリなどの単玉はここ数年、出番がない状況だ。
しかしそれでも2倍のテレコンはまだダメ。旧製品よりもずいぶん進歩はしたが、パソコンでとことん拡大してみると合格点は与えられない。数年前にニコンが2倍のテレコンをリニューアルして飛び付いたが、非球面レンズを使った定価¥75600(税込み)の新製品も使ってみると当時の1・4倍や1・7倍の画質には及ばなかった。またしても無駄な出費をしたわけで、たった1度、それも試し程度に使っただけで今も押し入れの片隅に眠ったままになっている。自らの基準を下げて久しぶりに使おうと思っても、1・7倍を装着して撮った写真をトリミングした方が画質が良いのだから持ち出すまでには至らない。今後、気温が上がって陽炎の影響が顕著になれば尚更だろう。
そもそも2倍のテレコンなど、200ミリなどに装着して400ミリ換算にして使おうとするような奴はいまい。DX機なら200ズームに、(2倍テレコンより遙かに優れている)1・4倍で420ミリになるのだから不要。使用するとしたら400ミリ以上の大口径レンズでなければ意味はない。それも状況を考えずに、ただ焦点距離を伸ばそうというだけでは致命的な失敗につながり、迂闊に手を出したら大やけどする。
では自分はどうしているかと言えば、例えば500ミリだけしか持参していないときに1000ミリの画角が欲しい場合、1・7倍を使って850ミリとして、それで撮影した画像をトリミングする。この方が十中八九、2倍テレコンを使った写真よりも断然、結果は優れている。被写界深度の上でも有利だし。
このことは先日、雑誌によく写真を掲載されている方のブログで2倍テレコンを使った画像を拝見し痛感した。ご本人は2倍のテレコンに満足して賛辞を寄せていたが、よく見ると画質はズタズタなのだ。プリントもせずにパソコン画面だけで判断しているから画質の劣化が目立たないものの、原寸大に拡大したら惨たんたる結果であることを気づいていない。のんきなものだ。これを見て、使ったことのない人が自分のような無駄な出費をしなければ良いと思った次第。余計なことだがベテランでさえこの始末なのだから。
ほかにもテレコンを使う際のコツはあるが、ブログのネタも尽きかけているので追々。
下の写真は言わずと知れた島松~北広島で撮影した「北斗星」。これをノートリミングで撮ろうとしたら1000ミリは欲しい。500ミリに1・7倍で850ミリからトリミングしたが、風の強い曇天とはいえ8月に1000ミリなんかにしていたら陽炎で見るも無惨な結果になっていただろう。もちろん事前にこの日の予想最高気温を調べ、体感温度を考え、さらに事前の列車でテストを繰り返したうえで撮影に臨んだが、もう少し気温が高ければ躊躇なく700ミリ(1・4倍装着)からトリミングしていた。それでも地上からあまり高くない連結器回りには陽炎がうっすらと立ち上っている。
そう言えばここでは1度も「カシオペア」を撮っていないことを思い出した。
(写真、文:U)
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