« 困り果てた北の2会社 | トップページ | こちらも畑違いの写真を »

2014年9月28日 (日)

この飛行機で行くんです

今日はいつもとガラリと違う写真でいってみましょうか。
で、この写真です。
写真の状況、ちょっと説明が必要かもしれません。
飛行機が飛んでいる背景は海面です。
ずいぶん低空なので、墜ちない? 大丈夫? と心配されそうですが、平気です。
実は画面のすぐ下には飛行甲板があるんです。

飛行機はグレイハウンドという艦上輸送機。
そう、航空母艦に着艦寸前の状況というわけです。
画面左側の緑色の海面は空母が全速前進する航跡です。
グレイハウンドは空母に物資や人員を空輸するための輸送機なんですね。
空母の飛行甲板といったら艦上戦闘機や艦上攻撃機が発着艦するという印象が強いですが、こんな艦上輸送機も欠かせません。
作戦遂行中は簡単には寄港できないため、搭載している戦闘機や攻撃機が故障した際のリペア部品から、何千人もの乗組員の食糧や郵便物まで、陸地と接点を持てる唯一の手段として輸送を続けているんです。

そうなりますと、戦闘機や攻撃機はまだしも、このようなターボプロップの輸送機が空母の艦上を発着艦できるのかと疑問を持たれる方も多いことでしょう。
でも、大丈夫です。
グレイハウンドは戦闘機や攻撃機と同じ着艦の仕方、発艦の仕方をするんです。
写真は着艦する寸前ですが、機体後方の下面にフック状のアレスタが付いているのがおわかりでしょうか。
アレスタといっても、電気機関車の避雷器じゃないですよ。
アレスティングフックともいい、飛行甲板に張られたアレスティングワイヤにこれを引っ掛けて機体を停止させる装置です。
飛行甲板に最終進入したグレイハウンドは、接地と同時にアレスタをワイヤに引っ掛けることによって、わずか十数メートルで停止できてしまうのです。

対して、発艦はカタパルトを使用します。
カタパルトとは射出装置のことで、飛行甲板に埋め込まれた車輪のけん引装置を蒸気の力で一気に動かすことで機体を発艦させます。
カタパルトはおよそ200メートルほどしかありませんから、その間で機体を離陸速度まで持っていかなければなりません。
なので、凄い力で機体を一気にけん引し、動作開始1秒ほどで機体は時速200キロ近くにまで強制的に加速させられて、海上上空へと放り出されます。
余談ですが、カタパルトによって次々と戦闘機が離陸していく艦上には、まるで蒸気機関車が近くにいる匂いがするんです。
といいますのは、カタパルトは高圧蒸気の力で機体をけん引しているからです。
撮影中に「えっ、カマがいる?」と何度キョロキョロしたことでしょう。

話を戻しましょう。
グレイハウンドの機内に人員輸送用のシートを装備する時は、空軍や航空自衛隊の輸送機のようなロングシート(パイプと布っきれのやつです)ではなくクロスシートですが、後ろ向きに取り付けられます。
着艦時、発艦時とも相当大きな衝撃が伝わりますが、どちらかというと着艦時の方が大きいからです。
グレイハウンドの操縦プロシジャーを勉強したことがないので推測ですが、エアスピード110ノットで最終進入したとすると、空母が風上に向かって全速前進しますから、風速10ノット、機体発着艦時の空母の速力30ノットを引いて、艦上での見かけの最終進入速度は70ノットになります。
着艦寸前に思いっきりエンジンパワーを入れてプロペラピッチにもトルクをかけますから(そうしないとワイヤに引っ掛けそこなった時にボチャンと海に落ちます)、それにプラス20ノットしたとして、90ノット。
90ノットとは時速約167キロ、だいたいこの辺が艦上から見た実速度でしょうか。
こんなスピードで飛んできた物体が一瞬で止まってしまうのですから、機内で受けるGをご想像ください。
なかなかファンタスティックです。

その後ろ向きのシートですが、発艦時も少々厳しいことになります。
パイロットがエンジンをフルパワーに入れて地上に“Ready!”をコールしたら、あとはいつカタパルトを作動させるかは地上のオペレーターの手にかかっているわけです。
なので、タイミングというものがまるでわかりません。
パイロットですらわからないのですから、後部の乗員にわかるはずもないのです。
発艦する戦闘機を撮影していても難儀するところですが、乗っていても同じです。
シートバックに頭を押し付けていないと、数秒間頭を元に戻せなくなるほどのGが伝わります。

でも、グレイハウンドさまさまなんです。
艦上で撮影する時、この飛行機が飛んでくれないと、空母の長い航海を最初から最後まで共にすることになるのですから。

(写真/文:某I)

C2a

|

« 困り果てた北の2会社 | トップページ | こちらも畑違いの写真を »

執筆者某I」カテゴリの記事

航空機」カテゴリの記事

コメント

Iさま、
ご無沙汰しております。

たぶん覚えておられないと思いますが、
一回は山線で走ったC11の重連を216.3kpで。
その前は真夏の8月1日だったかな、ITMでディズニーのドリーム3、ディズニーシーバージョンを一緒に撮影しました。

アレスティングフックの話、Gの話、興味があったので楽しい内容でした。
以前、ニュータに撮影にいきますと、ちょうど南側のエンスーの集まり場の前にワイヤーの設備がある事を教えてもらい、びっくりしました。
JASDF戦闘機ではもうアレスティングフックの訓練はなさそうですが、一度は生で見てみたいです。

ニュータと言えば、某雑誌F15AGR特集、の表紙でF15が4機タキシングするシーンの表紙に憧れ、そのポイントを探し当てるも・・・撮影ポジションの高度が???

いつかお話お伺い出来るといいな、と思っております。

では

投稿: Long | 2014年9月28日 (日) 21時48分

Longさん、コメントありがとうございます。
こちらこそご無沙汰しております。
きっとご拝顔すればわかるはずです。

すべての戦闘航空団の滑走路両側にはアレスティングワイヤー(着陸索と呼びますかね)がありますね。
フックランディング訓練は回数は少ないですが定期的にやってるんじゃないでしょうか。
このほかにも、滑走路端にはクラッシュバリア(いわばキャッチネットですね)なんていうのも立ち上がります。

どの写真を使ったかうろ覚えなんですが、新田でのタキシングの撮影となりますと、私はメインTWYの誘導路灯横にうつぶせになるか、あ、それとも、施設隊に高所作業車を出してもらったかもしれません。
管制隊まで巻き込んで「悪さ」した可能性が高いです...
あの地でのAGRはとてもお似合いだったので、展開してしまうのが少し残念ではあります。

投稿: 某I | 2014年9月29日 (月) 19時40分

Iさま
返信ありがとうございます。
僕が見た表紙の写真は高所作業車ですね。
東側のRW28のラストチャンス手前でターンする所を隊員さんなんかがランニングする道路から高車だったんでしょうね。
めちゃくちゃカッコ良かったです。
真似出来ませんね・・・
この秋にはニュータに行くつもりなので、そのポイントを地面から撮ってきます涙
民間人は悪さ出来ません・・・

投稿: Long | 2014年9月29日 (月) 22時52分

Longさん、またまたありがとうございます。
やはり高所からの俯瞰撮影でしたか(って、自分が撮影いたしましたのにうろ覚えで申し訳ありません)。
具体的にどこに占位したかは失念いたしましたが、メンタクRWY28ラストチャンス近くで撮影しましたことは間違いありません。
AGRは5WGではないにもかかわらず、5WG隷下の部隊の皆さまにご協力いただき、実現した絵面であったことをおぼろげに記憶しております。

その後、何十回と通っております基地で、202SQ、301SQ、臨時飛行教育航空隊、23SQ、そしてかつて空中給油訓練を開始する時の全国各飛行隊選抜パイロットと空軍18WGの訓練など、とても懐かしく思い出されます。
悪天候下の戦競でノーフライが続き、1週間以上滞在したこともあり、その時にはかつてさんざん撮影しました高鍋の橋梁、大淀川橋梁、清武-日向沓掛-田野-門石(信)-青井岳-楠ヶ丘(信)-山之口のこう配区間を再訪し、涙してきたこともありました。

投稿: 某I | 2014年9月30日 (火) 00時09分

Iさま、
何度もご丁寧に返信して頂き恐縮です。
1週間以上の滞在の事は以前のU様の記事の際に拝見しましたが、戦教だったのですね!
あの地での戦教、うらやましいです。
想像するだけでドキドキします。

AGRと航空団の事も改めて考え直すと、おっしゃられる通りで。
基地こそ同じですが、基地内では書かれておられる事情があるのですね。

最近では鉄道の方も国鉄型やブルトレが無くなり、民空ではB4まで減少し、さびしいご時勢ですが、
空自の撮影はタフですが面白いです。

空撮や空母へのアプローチは撮れませんが、Iさんの写真を励みに頑張ります。
空撮と言えば、、、政専機もありましたね~。あ、あれも衝撃でした。


投稿: Long | 2014年9月30日 (火) 08時07分

Longさん、何度もお返事を頂戴し、とてもありがたいこと、うれしいことです。
戦競の話、いつぞやも書いておりましたか...
例年、5月というのは天候が不順なことが多く、5WGだけでなく2WGや6WGでも長期戦になったことがありました。
毎朝基地に出向き、WXのT-4からのリポートを聴いて午前中スタンバイするも、お昼近くになって午後のミッションキャンセルというようなパターンが続きます。
当然別件の仕事があるわけですから、立入申請などで名前が変更できないものは一時帰京して戻ってくるということもよく発生しました。
だいたいどこの基地にも仲のいい戦闘機Pがいますので、夜は呑みにいったりするのですが、それも連日のこととなると無理ですから、ホテルでおとなしくデスクワークをこなすなど寂しい日々をすごすことになります。
そこで、かつて昭和40年代に何度も通った日豊本線の撮影地を訪れることは、何よりのストレス解消になりました。

空撮は被写体の三次元の動きに加え、自らのカメラも動ける(動いてしまう)ところに、また事前ブリーフィングと飛行中に双方の動きを即座に言葉にしなければならない厳しさがありましたが、やり終えた時の達成感は代えがたいものがあります。

投稿: 某I | 2014年9月30日 (火) 19時18分

Iさま、本当に何度もすいません。
ご返信ありがとうございます。
こうして書いていますと、色んな事を思い出し、お伺いしたい事がたくさん出てきますが、
ご迷惑な部分もあると思いますので、次回お会いした際にお伺いしたいと思います。
今年はなさそうですが、来年の戦技競技会はどこの基地でも一度張り付きたい、と思っていますので、お会いできる事を楽しみしております。

投稿: Long | 2014年9月30日 (火) 19時32分

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.f.cocolog-nifty.com/t/trackback/1215589/57515507

この記事へのトラックバック一覧です: この飛行機で行くんです:

« 困り果てた北の2会社 | トップページ | こちらも畑違いの写真を »