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2014年9月16日 (火)

青函ブースター、ED79 100番台

津軽海峡線専用の旅客機として活躍してきたED79基本番台ですが、その活躍も残りが少なくなって参りました。
あと半年ほどで架線電圧とATCシステムが切り替わりますから、その時点で全機用途廃止となってしまうのです。
来年の夏臨ではEH800けん引のカシオペアなどが見られるかもしれませんが、このED79はもう物理的に走れなくなってしまうのです。

さて、今残っているED79は、ご存知のようにJR北海道所属のED79基本番台と、JR貨物所属のED79 50番台です。
でもね、少し前までJR北海道所属の100番台というのがあったんです。
この番台は国鉄のELとしては少し異端児でありました。
なにしろ、この機関車1両では海峡線を走れないんです。
ちなみに、走れないのは「海峡線」で、「津軽海峡線」ではありません。
ATCシステムのない津軽線と江差線は走れました。
どうして走れないのかといいますと、いわば貨物列車用の重連ブースターなんです。
ブースターなどといったら、ちょっと100番台に失礼ですが、けっこうそれに近い存在です。
ブースターとは、アメリカの貨物列車で時々見られる、機関車のくせに運転台のない車両のことです。
アメリカ中部の山越え区間を車を運転してますと、踏切でとてつもなく長い貨物列車に行く手をしばし遮られることがあります(これがけっこう楽しかったりするんですけどね)。
その時、先頭のDLの後ろ(編成の真ん中なんてこともありました)に運転席のないDLが付いていることがあるんです。
これがブースターです。
電車でいえば中間電動車に当たり、制御回路だけが先頭車からつながっていて力行するも、自車だけでは運転できない車両です。

ED79 100番台はここまで徹底してはいません。
通常のATS区間は単独でも走れまして、走れないのはATC区間だけなんです。
なにしろ、ATCのシステムを搭載してないんですから。
そう、100番台ATCシステムを完備する基本番台と重連で使われるための機関車だったんです。
No.2側(下り方)の運転台に車内信号装置だけを備え、ATC機器本体は搭載しません。
改造されたのは国鉄の分割民営化直前ですから、財政的にもっと厳しい時期だったですから無理もありません。
青函トンネル内の最急こう配は12‰です。
そこでED79が1000tの高速貨物列車をけん引すると、ちょっとスピードが足らなかったんです。
ED79は上り10‰こう配では1000tを持った時に75km/hで運転速度が均衡します。
ところが、上り12‰では60km/h台にまで速度が下がってしまうのです。
年中湿潤なトンネル内ですから、運転条件はそれ以下はあっても、それ以上はありません。
それでは特急電車などの障害になってしまうため(485系でもその後の最高速度は実に特例の140km/hでした)、ED79を重連にすることによってプラス10km/hほどの速度で運転できるようにしたんです。
この時、ATC装置は2両の機関車それぞれになくても、1セットあれば運転できます。
それなら、高価なATC装置をすべてのED79に積まなくてもいいじゃん、ということで100番台が生まれたんです。
100番台はアメリカのブースターと違って、No.2側運転室では運転もできます。
計器盤にATC信号計器を備え、次位の基本番台のATC装置によってATC信号が現示できるんです。
運転できるのは下り列車だけなんですけどね。

そんなことから、ED79 100番台は補機専用機として、1988年3月の津軽海峡線開業以来、旅客列車をけん引することはほとんどありませんでした。
なにしろ、重連が必要な旅客列車なんてありませんでしたから。
ですから、100番台は貨物列車の補機専用機として黙々と働き、EH500が台頭してきた2000年に入ると、全機廃車されてしまいました。
旅客会社の機関車でありながら、旅客列車を一度もけん引したことがない号機が多かったはずです。


写真は津軽海峡線開業前日の1988年3月12日、青森運転所から札幌運転区へ転配される24系編成です。
つまり、12日の朝“ゆうづる”で青森に到着した車両をすぐに転配させ、その日の札幌発の“北斗星”に使用するというわけですね。
その列車に貨物列車で乗務員のハンドル訓練を続けてきたED79重連が使用され、下り列車ですから100番台が先頭に立ったというわけです。
その後、“日本海”でしばしばED79重連を撮影しましたが、当然ながらそれらはすべて臨時列車運転に伴う回送重連ですから基本番台の重連でして、100番台が先頭に立ったのを私は見たことはありません。

(写真/文:某I)

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